ティオ:「大丈夫か、リミア」
リミア:「な、なんだ!」
リミア:「夜中に女性の部屋にはいるとは無礼なっ」
ティオ:「でも、声がきこえたから」
リミア:「こ、声なんかあげていない」
リミア:「このワタシが、どうして声なんか……」

リミア:「ひっ……!」
強がって見せてるけど、これって明らかに風の音が怖いんだよな。
リミア:「これくらい、なんでもない」
リミア:「さっさと出て行け!」
……って、真っ青の顔で言われてもなぁ。
しかも布団にくるまってる、この姿。
ティオ:「放っておけないだろ」
リミア:「なんだっ!」
ティオ:「うーんと、そのだな」
リミア:「はっきりと言えっ!」
ティオ:「リミアが寝付くまで、ここにいてもいいか?」
リミア:「……は?」
ティオ:「実は、風の音が怖いんだよ」
リミア:「ワ、ワタシは怖くなどっ!」
ティオ:「いや、俺が」
リミア:「……え?」
ティオ:「昔の話だけど……うちの親が死んだ頃、なんか不安になった夜があってさ」
ティオ:「自分の家だし、今までだって一人で寝てたのに、妙に風の音とかが怖くなってな」
昔から、ちょっぴりボロの我が家。
あの時も風の音が強かったんだよな。
ティオ:「んで、結局当時からここに住んでたアイナ姉さんとか他のシルフィードたちと、リビングで雑魚寝」
ティオ:「一人で寝るのは怖くても、誰かと一緒だったら気が楽になるんだよな」
リミア:「……ワタシは、一人で大丈夫だ!」
ティオ:「だから、リミアがじゃなくて、俺なんだって」
ティオ:「今晩は風が強いだろ?」
ティオ:「だから、しばらくここで気晴らしさせてくれよ」
……ってことで、納得してくれるとありがたいぞ。
リミア:「………………」
ティオ:「リミアが寝たら、帰るからさ」
リミア:「……下僕のくせに生意気な」
ティオ:「はいはい」
リミア:「店主のくせに、従業員に頼るとは情けない」
ティオ:「はいはい」
リミア:「ワタシは怖くなど無いのだぞっ!」
ティオ:「だよな」
リミア:「……ちょっとだけなら、いてもいい……」
ティオ:「そうか」
ティオ:「ありがとうな、リミア」
リミアがもぞもぞと、ベッドの中に潜っていく。
リミア:「下僕のくせに、情けなくも怖いというなら、手を繋いであげても……いいぞ」
ティオ:「ん、さんきゅ」
布団から出てきた小さな手を繋ぐ。


       

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